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よしだが行く あきないえーど編
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■ 第七話 株式会社カドー 門 義晃 社長
著:「あきない・えーど」所長 吉田雅紀
こんにちは!あきない・えーどのよしだです。今回の「よしだが行く」は株式会社カドーの門 義晃社長です。門社長は1962年生まれの39歳です。大阪で一番いい大学(笑)を1985年に卒業されて、富士銀行に入行されますが、1988年にはお父様が経営されていた「カドー」に戻って来られています。

僕はこの経歴を拝見して、きっと、これは門社長の意思とちごて、お父様に口説かれて「引き戻されてはる」と読んだんですが、正解でした。エリートコースを棒に振って、帰ってこられたご実家の事業は婦人服の現金問屋です。当時はまだ、法人にもなってなくて、お父様の個人事業やったとのことです。
「船場でよう儲けたはる社長がいはる」と門社長をご紹介いただきました。この時期どないしてアパレルで儲けたはるねんやろ?是非ともお話をお聞きしたい!ということで今回お邪魔することになりました。
お話は門社長が家に戻って来られたところから始まりました。
当時、門社長は実家の商売を継ぐつもりはまったくなかったとのことですが、時代はバブル。お父様が門社長を口説かはったらしいです。「売上が上がって、ええんやけど‥人がいてないねん」とかなんとか‥。門社長はここでカドーに入社するに当たってお父様にいくつかの条件を出されました。まず、法人にすること。そして、事業拡大の為には借金もする。やるからには銀行から「借りて下さい」って言ってくるような会社にする。給料は同期サラリーマンの2倍を保証してくれること。などなど‥。
その時のことを門社長はこんな風に語っておられます。「そら、嫁はん泣きまっせ。今でこそ、そうでもありませんが、10年前の銀行マンでっせ。自分でいうのもなんですが、エリートですやん。当時、東京にいたんですが、20万ぐらいの借上げ社宅に2万円ぐらいで住んでました。嫁はんは銀行マンの妻になったはずやのに、ある日突然、大阪の、それも船場の、現金問屋の嫁はんになってしまうんですよ。そら、泣きまっせ。それで、オヤジに大阪に帰るにあたっていくつかの条件を出したんです」

門社長はカドーに帰ってから銀行での経験をいくつか事業に取り入れはります。その一つが「売掛システム」です。これは銀行の「消費者ローン」を参考に限度額50万円の掛売りのシステムです。今まで船場の商売は上顧客だけに掛売りしていましたが、大福帳での管理には限界があって、本当に限られた顧客に対するサービスに留まっていました。門社長は顧客をコンピューターで管理することで、すべての顧客に50万円の与信を与えた訳です。カドーでのお客様は商売でお付合いしてる訳で、通帳を作っただけの銀行の顧客に比べれば、同じ与信を与えても、消費者ローンより確実との判断でした。
また、日々の事務作業を確実に、しっかり、やることも銀行で学んだとおっしゃっていました。特に経理に関しては完璧を求めてはります。得意先に対する売掛管理、仕入先に対する買掛管理、どれも確実にやっておられます。当たり前と言えば当たり前なのですが、この「当たり前」がキーワードになります。
後、問屋の生命線である仕入れですが、僕は「仕入力」と「売切る力」が問屋というか流通の命やと思っていますので、その辺のことも聞いてみました。

ここでも門社長のお話に「当たり前」が出てきました。
「うちの仕入担当は楽してまっせ。品揃えは難しくないんです。400社以上のメーカーがうちに仕入てくれって商品を持ってきます。10個の中から1個選んでも売れるかどうか難しいですが、たとえばそれが1000個ならよりヒットの確立は上がります。多くの商品を見れば自ずと売れ筋は見えてきます。ここからがうちの力なんですが、なんで400社ものメーカーがうちに売りたがるのか?それは当たり前のことを当たり前にやってるからです。簡単なことです。ちゃんと「支払いする」ってことです。うちは20日締めの10日支払いで現金です。端数値引きも、一部入金も支払い遅延もありません。100%決済です。でも、アパレルではこの当たり前が出来ていない会社が多いのです。メーカーはどこに売りに行くのか‥九州まで行って長い手形もらうより、大阪で現金の方がいいでしょ。当たり前の話です。
この「当たり前のことを当たり前にやる」というのがカドーのポリシーのようです。そして、カドーの業績の秘密はここにありました。
なんで、この時期、アパレルで、それも船場の現金問屋‥構造不況の代表選手みたいに言われてる業界で、どないして好業績を続けてはるか?この質問に門社長は「当たり前のことを当たり前にやってるだけです」と答えはりました。「吉田さん、この当たり前をやらへん中小企業が多いと思いませんか?スターバックス行ったら、気分よろしいでしょ。でも、近くの喫茶店入ったら、カウンターに物が置いてあったり、愛想のないウェートレスが出てきたり、それで、儲からんって、そら儲からんは‥。スターバックスの真似したらいいだけです。当たり前のことを当たり前にやったらいいんです。そう、思いませんか?そやから、うちは当たり前にやってます。改善しなアカンこと。工夫したらいいこと。日々の仕事の中にいっぱいあります。これをコツコツ改善していくんです。ちょっとしたことですが、昨日のカドーから少しだけ進歩する。これでいいんです。ちょっとずつですわ‥(笑)。そやから反対に、うちの商売は大化けしません。だから、今年もまたパープレイですは‥(笑)
そうなんです。㈱カドーの業績は十数億の売上に数千万の経常。若干の上下はありますが、そう言われてみれば安定したパープレイです。でも、やっぱ、これが門社長の実力なんでしょうね。
銀行での経験を活かしておられるお話が続きましたが、反対に銀行が門社長の反面教師になっているところもあります。
銀行にいる時、毎日残業、何杯もコーヒーを飲んで、10時、11時に終わる頃には食欲がなくなってる。土日は仕事を家に持って帰って、会議では上司からノルマを追求されて‥。息つく暇なく、走り続ける。自分も家族も大切にできない。この頃、門社長は「幸せってなんやろ?」って考えていたとのことです。当時の役員が会議で「55歳まで健康でいてたら、みんな役員になれます」って話をされたらしいです。その時、門社長は「そうか、銀行で働いてたら、みんな55歳までに病気になるんか?」って思ったそうです。
㈱カドーは門社長の「自分にとって何が幸せか‥」が経営の理念になっているようです。「うちは残業もなければ、ノルマもない。そして、お客さんに喜んでもらって、それが、商売になってる。そんな幸せなことはないです。銀行の時は貸付と貯金の両方のノルマがあった。お金が必要やから借りる。お金が余ってるから預ける。この二つを同時に達成するなんて本当は不可能です。当時何をやっていたかと言うと、内緒の話やけど5千万欲しいというお客さんに1億貸して、残りの5千万を貯金してもらう。当たり前の話ですが、預けるより、借りる方が利息は高いのです。はっきり言って、お客さんを騙していたと思います。少なくともお客さんに喜んでもらえる商売やないです。でも、今は違います。カドーの商売はお客さんに喜んでもらっています。それで、残業もないしノルマもありません。自分自身も家族も大切にできます。そんで、会社としても利益を確保させていただいてる。こんなに幸せなことはありません。でも、こんなこと言ってるから今年もパープレイですが‥(笑)

銀行で学んだ原則「当たり前のことを当たり前に‥」。それと、これも銀行で学んだ「仕事の前に自分の幸せがある」この二つを門社長は自分の事業を通じて具現化されたということでしょうか?
最後にこれからのことについてお聞きしました。「30代の社長はまだまだです。そうでしょ?吉田さん?そう思いません。ダイエーの中内さんも40過ぎてからです。マクドナルドの藤田社長も40才過ぎてからでしょ。僕もやっと40になります。㈱カドーはこのまま当たり前を当たり前に、当たり前の会社でありつづけたいと思っていますが、僕も男の子なんで、当たり前やないこともしてみたいのです。40才になって、新しい事業を考え中です。ちょっと夢を追いかけてみようかな?って」

どんな事業かはお聞きできませんでしたが、当たり前でない門社長も見てみたいです。
いや~門社長、ありがとうございました。「当たり前」肝に銘じます。
■「よしだが行く!」鞄持ち後記■
第7回目鞄持ち システムクリエイト株式会社 渡邊陽子

とても生意気ですが、門社長は非常に勉強をされている方だとお見受けしました。
そして、その勉強してきたものを自らの会社にアレンジして活かすことのできる方だとも。門社長との会話の中で、ビビッときたポイントは、3つです。
ポイント1「改善すること、変えていくことは山のようにある。」
一見同じような毎日の繰り返しの中で、常に今をよくするという視点で商いを見て、それを毎日ちょっとづつでも改善していくという行動に移すことが、今の業績につながっているのだと感じました。ホント、「商い」は「飽きない」です。
ポイント2「当たり前のことを当たり前にする」
例えば、服を作っているところから服を買うからお金を払う、船場で小売店さん相手に服を売るからお金を請求してお金を頂く、この当たり前の事務的作業をきちんとすることがとても大切だと。お金の流れをきちんと把握するという商いの根本を押さえることが大事だと。もちろんその精神は、幹部の方に簿記2級取得を義務づけていらっしゃる社員教育からも見て取れます。商売の原則を守る精神を根強く感じました。
ポイント3「勉強する」
卸業では珍しくいち早くPCを導入し顧客管理から売上管理を取り入れられました。
また現金商売のこの業界で、上限50万円のお客様口座を採用されています。ポイント1で改善する方法も、勉強しているから一番効果のあることを導きだせるのだと感じました。
今の世の中「世の中にこれから必要とされている分野で、しかも誰もあまりやっていないもの。」を必死にネタを探して会社をおこしたり、新規事業に取り組んだりしています。
それも大事なことだけど、商売に共通する大切な足場がしっかりしていなければ、せっかくネタもきっと台無しになるのだろうなぁ、と強く感じました。
そして商いをする上で、もう一つ大切なこと、それは「何が自分にとって幸せか?」が自分でわかっていること。それは、商売をしていく中でとても強い力になるのだろうと感じました。門社長はおっしゃいました「商売して人に喜んでもらえる。こんな幸せなことない。」と。やはり実際に商売をしてはる人は、どっか腹の座りが違います。
しかも結果も残してはる人は、商売としての基本的なことをしっかり押さえることと、新しいことを勉強し取り入れること、「温故知新」を実際に行動していらっしゃいます。口で言うのは簡単ですが、それを行動としてしかも結果を残すことはすごいことです。
あぁ、もうこの年齢になってしまった!と焦る自分が時に顔を出しますが、自分にとって幸せと感じることを大切に、当たり前のことを当たり前に一つずつクリアしていって、STEP BY STEP!で歩んでいけば、きっと大丈夫!と、心強く思えた機会でした。
「したいことは何?」「なりたい自分は何?」「それをするために、今足りない物は何?」、じゃぁそれを一個一個クリアしていこう!そう思うと足取り軽く、行きしなに見た船場の町がより輝いて見えました。
