株式会社あきない総合研究所

吉田コンテンツ

よしだが行く あきないえーど編

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■ 第六話 ヴイストン株式会社 大和信夫 社長

著:「あきない・えーど」所長 吉田雅紀


こんにちは あきない・えーどの吉田です。今回お邪魔したのはヴイストン株式会社の大和信夫社長です。
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大和社長のところは研究開発型のベンチャーで現在は「360度の映像を1台のカメラで撮影することが可能な全方位センサー」の事業化を進めておられます。大和社長はこの技術をヴイストンが一人占めにするんやなくて、より多くの企業と協同で応用研究し、実用化したいという方針なんです。それで、この技術に興味を持っていただける研究者や企業向けに「全方位センサーキット」を作り、すでに約300セットを販売し、そのうち数社とは共同研究もスタートしておられます。

それと、これはヴイストンの最大の特徴なんですが、この会社は産学官の連携から生まれました。「産」は日本LSIカードの大木信二社長(故人)とシステクアカザワの赤澤洋平社長。「学」はこの技術の発明者で特許保有者である石黒浩和歌山大学システム工学部教授。そして「官」は当財団が運営する島屋ビジネス・インキュベータです。日本LSIカードもシステクアカザワも島屋のOB企業でした。この全方位センサーのビジネスプランは大阪市の主催するベンチャービジネスコンペ大阪2000で産学連携推進賞を獲得しています。
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「あらら、大和社長はどこで出てくるの?」って思ってる読者のみなさん。大和社長はここから登場します。

● 出会い頭に注意!
僕も社長ですが、「なんで?社長になったん?」ってよく聞かれます。でも、そんな大きな理由がある訳でなく‥「成り行き」ってしか答えられません。ある人は「オヤジが死んだら社長になってたとか」「共同経営者とジャンケンして勝ったから」とかいろいろありますが、大和社長の場合は「出会いが大和さんを社長にした」って感じです。「出会い頭に注意」っていうのは聞いたことがありますが「出会い頭に社長」っていうのもあったんですね。(笑)

大和社長は独立志向の強い青年で35歳までに事業を起したいと思っていました。営業力を付ける為に不動産業界でがんばり、サラリーマンの頃から行政のサービスをうまく利用して調査や研究をしたり‥。そして、独立準備の為にその不動産屋さんを退職し、ビジネスプランを練っていた時にはすでに37歳になってはりました。その頃、お父様が入居してはった島屋ビジネス・インキュベータがアメリカ東海岸への視察ツアーを企画。このツアーに大木社長、赤澤社長、そして、会社を辞めて時間だけはある大和さんが参加していました。その大和さんは赤澤社長と同室で大木社長ともこの旅行でお知合いになられた訳です。

帰ってきた大和さんは自分のビジネスプランを大木社長に見てもらう為に大木社長に連絡しました。そしたら、大木社長が「ちょうどええ。赤澤社長もいはるから、すぐ来い」という話になって、大和さんはビジネスプランを見ていただけると一目散で大木社長の元へ‥ところが、大木社長は「そのプランはええから、それより、大事な話があるんや」と和歌山大学の石黒教授が研究されてる全方位センサーの話ばっかり。挙句の果てに「これを事業化する。どうや、大和君、社長やらんか?」との話になりました。なんのことやらチンプンカンプンの大和さん。この話が2000年4月です。その後、石黒先生に会ったり、関係者との調整なんかがあったりして、8月にはヴイストン株式会社は誕生しています。そして、大和社長も誕生した訳です。大木社長、赤澤社長との出会いが大和社長を生みました。みなさん、出会い頭には注意しましょう!(笑)

● 特許について
「僕らはアイデアで商売してる訳ではありません。製造業なんです。」大和社長は特許についての考えをここから話し始めました。世間では特許が膨大な利益を生んだなんてことを言いますが、実際には特許のライセンス料で金持ちになった人なんていません。そこにはその特許をベースにした実業がありました。事業があったんです。僕達も全方位センサーの特許をお金に変えるという発想はありません。ここから、商品なりサービスを生み出すことが目的であり、それが収益の源泉と考えています。ただ、特許を持っているということは相手が大企業であっても同等な立場でアライアンスが組めるというメリットがあります。これはありがたいことです。特許もそうですが、知的財産とは‥今あるものを言うのではなく、未来に渡って次々に新しい技術を生み出せる力を知的財産って言うんだと思います。これ「なるほどTheワールド」でした。(笑)

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● 3分で決める。
ヴイストンは株主も取締役も多くて経営に関わる合意形成が大変なんやないかと質問してみました。だって、大和社長はまだ38才です。それを取り巻くみなさんは連戦の勇士ばっかりです。ところが、大和社長の話はそうでもないということでした。当然、技術については石黒先生がリーダーですが、マネジメント、マーケティングについては大和社長に一任されてることが多いとのこと。大木社長がご健在な時も見方についてのアドバイスはあったようですが、「アカン」と言われたことはないとのことでした。そのことより、意思決定の話でびっくりしたのは‥「僕はどんなことでも3分で意思決定するようにしています」って言われたことです。「3分以上考えたからっていい結論がでる保証はないでしょ。30分考えても一緒なんやったら、3分で充分です。意思決定してやってみる訳ですから、アカン結果がでたら、また3分考えて方針変えたらいいでしょ。当然、朝礼暮改もありです。吉田さんは何分考えますか?」って質問に‥吉田たじたじ‥う~ん。事によるかな?って中途半端な答えでお茶を濁しました。
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企業のスピードはその企業の意思決定のスピードって言っても過言ではありません。中小企業の場合は社長がすべてを意思決定しますから、社長のスピードです。社長が意思決定しない間はその会社は止まってることになります。「取り敢えず」とか「後日」なんて言葉で世の中の社長は意思決定を先送りします。でも、その間、その会社は動きません。社長待ち状態です。
ほんま!大和社長のおっしゃる通りです。意思決定に5分はいらない!1分では少ないけど3分あれば充分。世の社長さん、早よしな、置いてかれまっせ。

● 最後に
大和社長は株式公開を5年後の目標にしておられます。売上なり利益の基準は3年でクリアーする計画との事ですが、事業として、しっかりした基盤を作るには5年必要と言っておられました。また、人はいろいろ‥で社長もいろいろ、でも事業の成長に合わせて社長も替わるべきとのご意見でした。「事業は道を作るのと一緒です。地ならしする人、アスファルトを敷く人、そのアスファルトを管理する人、それぞれ同じ社長でも役割が違います。僕もそういう意味で、ず~と社長ではあかんと思います。」
若干38歳、今、ハタと気づきました。僕と10歳違います。僕も10年前にこれぐらいしっかりしとったらよかったのに‥トホホ。そんなこと言っても仕方がないので、帰ってビールでも飲みます。大和社長!ありがとうございました。僭越ですが‥前途有望!大阪の若手一押し社長です。
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● おまけ
いろんな社長とお付き合いがありますが、防衛大学出身はお初でした。残すは東大だけか(笑)

■「よしだが行く!」鞄持ち後記■
第6回目鞄持ち  余暇文化研究所 川井眞理
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みなさんは日頃、日常のいろいろな意思決定をどのように行っていますか?小は「今日の昼は何食べよか?」なんてたわいもないことから、大は人生の岐路に立った時の決定まで、すべて人の一生は決断の繰り返しともいえます。社長の仕事は会社の舵取り。大和社長はどのように意思決定をしておられるのでしょう?

素朴な疑問に対して「意思決定はタイミングが大事。3分以内に結論が出ないことはいくら考えても出ないと思ってるんで、3分でとりあえず結論を出します。どうしても気になったらもう一度考え直します」と明快な返事が返ってきました。もちろんその時点で得られる限りの情報を得、あらゆる角度から検討した上での゙3分の結論゙という意味なのですが、実はオチがあって「訓練してみたら、3分で出した結論と30分考えた結論が結局は一緒なんですよ。それに僕は30分も集中力がないんで(笑)」とか。

そして動き出した結果、下した判断が正しかったか否かの結論が見えてきたら「朝令暮改もいいと思ってるんです」。辞書でば朝令暮改゙は、「法令が出てもすぐ後から改められてアテにならないこと」と否定的な意味になりますが、大和社長は「どんどん環境も変わるし、これはアカンと思ったら変えればいい」ときっぱり。そこへ吉田所長が「知り合いの社長は朝令暮改の典型。社員に文句を言われて言い返したのが、『朝令から暮改までの間、お前は何も考えてへんやろ。俺はこのことをずーっと考えてたんや。そやから俺は進化し続けてるんや』」と応じてその場が笑い声に包まれました。

大和社長は言います。「経営者は達観して物事を見られないといけない。たとえ100人中99人の社員が反対しても、会社としてはいい判断というのは絶対あるからです」と。自らを「誰よりも運はいい」と言いつつも、その本意は「事業がうまくいくのは運がいいことだとは思ってないんです。必ずいろいろなことがありますからね。むしろ、一見マイナスのことが、人生でその人が考える材料をくれていると思っています」と、゙人間万事塞翁が馬゙を地で行く発想です。ビジネスマン・ビジネスウーマンにも非常に含蓄のある大和社長の言葉ですが、こんな言葉がさらりと出てくるあたり、さすが選ばれて社長になる人は違うなと思った次第です。

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