株式会社あきない総合研究所

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よしだが行く あきないえーど編

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■ 第二十一話 株式会社マイスター60 平野茂夫 社長

著:「あきない・えーど」所長 吉田雅紀

こんにちは、皆さん。僕の原稿の前半はメルマガと同じです。メルマガからのお客様もめげずに最後までお読みくださいね(笑)。 今回、お邪魔したのは株式会社マイスター60の平野茂夫社長です。http://www.mystar.co.jp/ms-0.htmマイスター60はメンテナンスとエンジニアリングのアウトソーサーですが、普通の会社とは、ち・と違います。「年齢は背番号、人生に定年なし」を合言葉に「60歳新入社、70歳選択定年」の60歳にならないと入社できない会社です。平均寿命が延びて、昔と違い、人生二毛作、三毛作です。そんな人達の経験や能力、技術を活かせる会社なんです。若い人は入れませんよ。残念でした(笑)。平均年齢は64歳。社員数370名のマイスター60は同じく平野社長が代表する株式会社マイスターエンジニアリングの子会社として平成2年に生まれました。
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さて、今回はこのユニークなマイスター60の生みの親、平野社長に設立の経緯から現在、そして、マイスター60の未来についてお聞きしてきました。

時は平成元年9月15日敬老の日に遡ります。その日、休日を奥様と過ごされていた平野社長がなんとなしに聞いていたラジオからこんな川柳が流れてきました。「サラリーマン会社辞めればただの人」これを聞かれた平野社長は「あ~寂しい話やなぁ~」って少し暗い気分になられたようです。でも、そこからくるくると考えがめぐり始めました。本当に「ただの人」なのか?定年が早いのではないのか?60歳といっても体力、知力、やる気も充分で、それまでに培ってきた経験や技術がある。そんな人達を「ただの人」にしていいんだろうか?本当に役に立たないのであろうか?あれこれ考えがめぐり、平野社長はそれらの自問自答に答えを見つけはります。高齢者が誇りとやりがいを持って働ける高齢者だけの会社を作くろう!‥と

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明けて、16日。平野社長は早速、マイスターエンジニアリングの責任者会議にこの構想を提案しはります。どこの会社もそうですが、とんでもないこと、言い出すのは社長と相場が決まっています(笑)。ところがみんなの冷たい反応。年寄りに何ができる?‥と。みんなの表情が反対を表明しています。それでも、平野社長はみんなに話し続けます。「年寄りって普通名詞で考えないで、固有名詞で考えてみて下さい。たとえば、うちのボイラー技師の長谷川さん、彼ももうすぐ60歳です。でも、彼は炎の色を見ただけで、排出ガスの濃度がわかる人です。それに、木村さん、発電機のタービンの回転音を聞くだけで、ブレードの異常がわかります。まだ、います。松本さん、彼は冷凍機のガスの流れが触っただけでわかる人です。彼らも60歳になったら、ただの人になるのでしょうか?私は違うと思います。彼らにはこれからもその経験と知識、技術者としての五感を会社としてまだまだお借りする必要があります。そういう人達がきっと、いっぱい、世の中にはいます。」ここまでお話になって、やっとみんながなるほど‥って顔になってきました。平野社長の話は続きます。

「メンテの仕事はみんなも知っているように地味で淡々とした仕事です。若い人は変化を求めますが、何も起こらないというのが一番いい状態です。だからこそ、正常を示す針を見つめ続けるのが仕事なのです。忍耐と強い責任感がいる仕事です。今日も『異常なし!』これが価値なのです。高齢者の方の経験と技術が生きる仕事なのです。私は高齢者の技術者集団を作ります。60歳でただの人にするのはあまりにもったいない。これは社会に対する私たちの使命です。マイスターエンジニアリングは利潤を追求する会社ですが、この新しい会社は高齢者の技術と経験を活かし、誇りをもって働いていただくことを事業の目的とします。」

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これで、社内のコンセンサスは取れました。しかし、これを事業にするのは、まだ、説得しなければならない先があります。そうです。お客様です。平野社長はこの事業に賛同いただくためにホテルやらビルオーナーのお客様を廻りました。お客様の反応は「高齢者の技術を活用するのは利にかなった話」ということで、概ね了承。しかし、子会社とはいえ、資本金一千万の会社との取引となるとリスクの負担が取引自体に発生します。そこで、元請は今まで通りマイスターエンジニアリングとし、それをマイスター60にアウトソーシングするスキームでお客様のOKが取れました。

よし!社内もOK、お客様もOK、後は60歳以上の技術者が本当に集まって下さるのか?というとこまできました。

年が明けて平成2年1月7日。マイスター60の求人広告が朝日、毎日、産経、読売、の4大紙に掲載されます。お正月特集が終わって、求人広告が載せられる年明け最初の日でした。広告は名刺大の大きさの窓広告でした。広告の一段目には「年齢は背番号、人生に定年なし」のキャッチコピーが‥ この日、平野社長はいつも通りに池田のご自宅を出られて、これまたいつも通りに7時半には会社についておられました。ところが、8時を過ぎた頃からいつも通りでなくなったのです。電話が鳴り始めました。「年齢は背番号、人生に定年なし」のコピーに賛同下さった多くの方の問い合わせの電話です。電話は1週間鳴り続けました。ここにきて、平野社長はこの事業の成功を確信しはります。

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これだけのご支持をいただけるなら、すぐに会社を作ろうと、平成2年2月1日の設立に向けて準備が始まりました。その記念すべき平成2年1月7日にたまたま大阪中小企業投資育成㈱(業界での略称は大阪投育さんです)の役員さんが年始の挨拶に来られました。大阪投育さんは中小企業の自己資金充実の為に作られた公的な投資機関です。この投育さんに新しく、会社設立に投資できる設立投資制度が出来ていたのですが、まだ、投資実績はありませんでした。そこで、大阪投育さんは平野社長が作られるこの新会社を設立投資の1号にしようと思われたのです。しかし、平野社長は2月1日設立と決めてはります。それに間に合うなら投資をお受けするという条件を出されました。大阪投育さんがどんな手を使ったのか(笑)はわかりませんが、1月15日に申請を上げて、1月23日には投資決定がおりました。(めっちゃ早い)マイスター60は高齢化社会に対応した先進企業として公の機関からの出資を受けたのです。

このマイスター60も11年目に入りました。当初20人でスタートした会社は今では370人の所帯になっています。やっと3年前から黒字転換し、利益が出せる体質になったとのことです。社員はすべて正社員。当初の理念通り、高齢者の方が誇りを持って、生きがいを感じて働ける会社になりました。

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最後に、その平野社長にこれからのマイスター60のことをお聞きしました。

「まず、今のマイスター60は技術集団ですが、次のステップは技術だけではなく、営業とか財務とか技術以外の専門家も取り込んだ、総合的な人材活用会社を目指します。私達は彼らのことをナレッジワーカーと呼んでいます。総合化することで1000名の規模が実現すると思います。企業が必要とするスキルがすべてここに集まることになります。お客様との契約形態も今の業務委託契約から派遣契約や請負契約など多様になると思います。そして、最終的にはここに集まったナレッジワーカー達が自分達でベンチャービジネスを立ち上げる。そんな会社にしたいと思っています。」

新しい形のベンチャー支援企業ってことですよね。僕もそう遠くない話ですから登録しとこかな?(笑)1時間ほどのインタビューでしたが、平野社長が終始ニコニコと笑顔でお話しされるのが、とっても印象的でした。本当にお忙しい中、ありがとうございました。


■「よしだが行く!」鞄持ち後記■
第21回鞄持ち後記 株式会社トータルソリューション 倉橋竜哉

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はじめまして 今回鞄持ちをさせていただいた株式会社トータルソリューションの倉橋と申します。

私事で恐縮ですが、私は以前炭焼きをしておりました。今回の訪問でそのときから持っていた心の中のモヤモヤしたものが晴れたような気持ちになりました。炭焼き現場で大手企業のお偉いさんだった人たちに高校生のバイト以下の給料で働いていもらっていたことがあるんです。なんでこんな所に来て真っ黒になって働いているのですか?と聞いたところ、「体力はある・時間もある・年金もらえるから金もある」でも働く所が無いとのこと。日本の社会構造はなんてもったいないことしてるんやろう。これではまるで飼い殺しじゃないか・・・その後独立を志していたとき、高齢者の技術を生かした事業プランを立てたのですが、コンサルタントの先生に「こんなん絶対に儲からん」と一蹴されてしまいました。確かにあの時のプランで開業していたら絶対につぶれていただろうなぁと今になれば良く分かるのですが、それを10年前から創業し運営・発展している平野社長には本当に頭の下がる思いです。

社名のマイスターは、ドイツ語の[Meister(名人・巨匠)]から由来しているのかな?と思っていたのですが、実は造語でマイ(MY)スター(STAR)つまり従業員一人一人が星になるという意味がこめられている。というお話がとても印象的でした。その社名の意味は、マイスター60の設立のきっかけによくあらわれていると思います。定年を過ぎた人が「大手企業の○○部長」から「ただの人」の人になってしまい、十把一絡に扱われることが多い世の中にあって、「○○さんは機械の音を聞いただけで調子が分かる。」「□□さんは・・・」というように一人一人の持っている卓越した技術に着目して会社を興した平野社長の着想は、普段から従業員一人一人の個性を大事にし、星に磨き上げる包容力と忍耐強さが無ければ生まれなかったのではないでしょうか。お話を伺う中でも平野社長の暖かさが随所に感じられました。

「中年・若者には変化のある仕事を」「年配の方には忍耐と経験が必要とされる仕事を」という風に分業・分社されておられるのを見て、今後日本が進むべき社会構造の縮図がココにあると確信しました。

まさに私がお伺いしたかった会社の訪問に鞄持ちをさせていただき、誠にありがとうございました。

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